『ルカの失踪』について
たとえば受験用の国語の問題文には(注)がある場合があって、それが読解のヒントになることがある。(注)を読むことで本文の情報が補足されて、そこに書かれている以上のものが見えてくる構造は面白いと感じた。でも、そのアイデアから始まったわけではない。書き進めていくうちに、そのアイデアをつけくわえていった、という感じだ。
書き上げてからだいぶ経ってしまったから、あの当時の感覚を思い出すのは難しい。ただ場所は地方都市、それも中心部から少し離れた郊外、という設定は好きで、そのために地方駅で何枚か写真を撮ったりもした。その傾向は『カンポサント』にもつながっていると思う。
エピソードとして、ボウガンでの事件を書いたが、これを書き上げてから後、本当にボウガンで人を襲ったというニュースを観た。小説を書いていると、たまにそのような偶然があるが、これは予言でもなんでもなく、自分の意識がたまたまそれに関係する出来事に反応しやすくなっているだろうと思うようになっている。